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Y多さんが連れて行ってくれたところがまた粋なところで、地元ではちょっとした有名なところだった。中は薄暗く細かな装飾に溢れちょっとした洞窟の様だった。アラビア語で熱く歌われているBGMが流れていた。Y多さん曰く、この歌手はとても有名でエジプトの美空ひばりのような方、とのこと。「むむむ、なるほど」と思いつつも店内のアラビアンナイトを髣髴させる異国感たっぷりの雰囲気に圧倒されて言葉が出ない。ただただ興奮。
そこではモロヘイヤスープとライス、そして鳥のモモ肉を焼いたものを注文した。トッピングにはサルサソースっぽいのとオニオンチップ、ドリンクはイチゴのジュース。イチゴはこの時期エジプトでは旬なのだ。食べてみて一言「美味い。」僕は世界で最も美味い食事が日本食だと思っていて、2番目にイタリアンが来る。(あくまでも個人的な感想です)エジプト料理は・・・まさにイタリアンと張るくらい美味い。正直驚いた。 エジプトは農業大国らしい。知っている人が聞けば当たり前のことだが、帰国後会う知人全員にエジプト滞在の話をする際「実はね、エジプトはね、農業大国なんだって」と話すと100%驚かれた。それほどイメージがないのだ。Google Earthで見てみると、なるほど、エジプト北部ナイル川河口にあるデルタ地帯は熱帯雨林の様に深い緑色をしている。また米どころでもあるらしく、品種はなんとジャポニカ米。美味いわけだ。いずれにしても食事が充実しているという事に安心した。「食」は滞在において最も重要なことだからだ。 そんな楽しい昼食を終え次に向かったのが友人宅。カイロ交響楽団首席クラリネット奏者の韓国人ヨンギ君。彼とその奥さんのヒージョンさんは僕らがまだドイツのフライブルグ音大にいた時の同級生。4人でよく遊んでいた。今はそれぞれ子供がいて(ヨンギ君の所は男の子。うちの娘と同い年です)、カイロで再会している。不思議な感じがした。 僕が1人で午前中から練習していた時、奥さんは先にヨンギ宅へ行っていた。今回は僕だけでなく、うちの奥さんもヨンギとヒージョンと共演するのでそのリハーサルもしなくてはならない。両家子供がいるから目を離す事が出来ない。ヨンギ宅でリハーサルをするのはベストなのだ。 再会を喜び早速リハーサル。学生時代を思い出す。ガーシュイン、ドビュッシー、プーランク、メンデルスゾーン、シュライナー、エルガー、マンガーニ・・・盛りだくさんのプログラム。余った時間で適当に楽譜を見つけては室内楽を楽しんだ。子供達はその間・・・↓ ヨンギの音楽は何も変わっていない。熱すぎるくらいに熱く一音に魂を込めて演奏する。お互い一生懸命に演奏し、そこには30代の僕らにしか出来ない30代の音楽があった。お互いドイツを去ってからいろんな事があったが、それでも自分を失わず自己の音楽を追求し続けている彼の姿勢が嬉しかった。時には音楽をする喜びを、時にはある種の葛藤を彼の音楽から感じた。 その日の夜、リハーサルを終えた僕らは思い出話に花が咲き、幸せで温かい一時となった。それはまるで小さな灯火がカイロの街に燈ったかような感覚だった。 その時マエストロが到着にホテルに向かっていた。明日、チャイコフスキーピアノコンチェルトのリハーサルが始まる。「とうとう来たか・・・」 ホテルへ戻りベッドに入った時、僕の手は少しだけ汗を握っていた。
さて、とうとうカイロ滞在がスタートする。 うっすらと目を開けるとそこはホテルの部屋。 エジプトのカイロに来ている事を理解するのに少し時間がかかった。 珈琲を淹れバルコニーに出てみると目の前にはナイル川が広がりうっすらと霧がかっている。 天候には恵まれ、最高の朝だ。そして朝の喧騒が少しずつ聞こえてくる。 「カイロかぁ・・・」と一言。 ナイル川沿いに高層ホテルが並ぶところに位置する我々の宿泊先からは街を一望できた。 とにかく茶系の建物が隙間を許さないほど密集している。東京も凄いと思ったが比ではない。 人々が行き交い、叫び声やら怒鳴り声が聞こえ、片道2車線の道路も気付けば片道4,5車線分の車がひしめき合っている。遠くに目をやっても見えないが、そこにはピラミッドやスフィンクスがあり、サハラ砂漠が広がっていることを想像できた。さらに北に行けばアレキサンドリアがあり地中海があり・・・歴史が見えてくる。エジプトに来たかと実感してきた。今日から10日間ここに住むわけだ。「さぁ、音楽をするぞ」 2月20日、今日から早速リハーサルが開始する。これからの10日間与えられた時間と環境を一番効率よく過ごすためにY多さんという方が同行し通訳をしていただき、さらにはいろんな事を教えてくれた。一眼レフをこよなく愛し、すでに何年来の友人のような感じでとてもリラックスできる方だった。「眠れましたか?今日はこんな予定です。何時にどこどこです。次はここです。ご飯はどうしましょうか?」感謝。 さて、今回はコンチェルトだけでなく室内楽もありソロもある。まずは午前中に1人で練習。カイロ在住のK村さんが快く自宅を提供してくれた。普段ホームコンサートもしているというのもあって、広いリビングには丁寧に調律されているKAWAIのグランドピアノがあった。まずは第1音。カイロの部屋に鳴り響くピアノの音。適度に乾いた湿度と広い部屋には心地よく伸びのある音色が響いた。日本の住宅事情ではこうはいかない。しかし当の住人が不在の中で僕1人そこに居るというのはなかなか緊張するものだ。何か悪いことをしているかのように感じる。いや、別に悪いことはしていないのだけど。 2時間ほどの練習を終え次に向かったのはオペラハウス。5日後にカイロ交響楽団と共演するところだ。そこのリハーサル室でコンサートマスターのヤーセル氏と会う。とても優しそうで非常に好感の持てる方だった。日本には何度か来ており日本食を愛して止まないそうだ。「ウナギオイシイ」と言っていた。彼はコンサートマスター兼ディレクターも務めており多忙極まりなく、ゆっくり話す時間もないので早速モーツァルトのヴァイオリンとピアノのためのソナタk.304を合わせた。これはモーツァルトの作曲したヴァイオリンソナタの中で唯一の単調の作品。激しいドラマはなく常に悲しく寂しくしっとりと、時にふと現れる母の愛のような温かさで救われ、しかし内に秘めた精神的な深さと強さを感じさせる名曲中の名曲。お互いの音楽で会話するように感じ合い、探り、理解し、疑問を持ち、試し・・・あっという間の1時間。多くを語らずお互いの音楽を感じ合い、次回に期待する、それで充分だった。要するにとてもよいリハーサルだったという事です。 「さて末永さん、昼食を食べに行きましょう。地元の人達が良く行くお店です。そういう所は大丈夫ですか?」とY多さん。 喜んで・・・! この日の夜、指揮の吉田氏が到着する。
先日卒業生2人と食事をした。1人は就職し1人は就職活動中だ。
2人と話していると大学入学当時を思い出しその成長を強く感じた。 頼もしささえ感じ「こんなにも人は変わっていくものか」とも・・・。 大学で教えるようになって丸4年たったが、初めて受け持った他の学生も 卒業しそれぞれの道に進んでいる。就職した者もいれば留学する者もいる。 教えることは難しい。適量の情報を伝えることの難しさを日々痛感している。 多過ぎても駄目だし少な過ぎても駄目。料理で言えば「適量の塩」だろうか。 素材自体に味があるわけで塩で味をつけるわけではない。 塩によって「味を引き出す」のである。 ・・・とまぁ普段あまり料理をしない僕がこんなことを書いても説得力にかけるのだが。 今回の記事は奥さんに読まれたくないですね。 いずれにしても今でもよく「あぁ多くを語りすぎた」と反省する。 けど、なんやかんや言っても学生は学生らしく成長し、経験し大人になり、 卒業し頼もしくなっていく。学生と先生と言っても所詮人と人。 人の持つその魅力に気付きそれを尊重し、口数少なく多くを伝え残したい。
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